社会保障
【社会保障の歴史】
世界で初めての社会保障制度は、公的扶助政策としてイギリスで「エリザベス救貧法」が制定され、この法律により、老人や病人への税金からの生活費の給付が行われたことが始まりです。1601年ですので今からおよそ400年以上前のことです。
その後、19世紀に、プロイセン(ドイツ)のビスマルクは労働者から保険料を徴収し、失業したときには失業保険を給付して労働者を助ける「アメとムチ」政策と呼ばれる社会保険制度を確立させました。
そして、20世紀になってからは、第一次世界大戦以後、とくに1930年代の世界恐慌後の不況の中で、大量の失業者や生活困窮者が出現し、アメリカではニューディール政策の中で社会保障制度が確立していきましたし、イギリスで「ゆりかごから墓場まで」というスローガンで有名な「ビバリッジ報告」がチャーチル首相の時代にまとめられましたことも特筆すべきことです。
そして、第二次大戦中のことですが、ILO(国際労働機関)も1944年にフィラデルフィア宣言を発表し、国際的に社会保障制度の確立が進んでいくようになりました。日本では、フィラデルフィア宣言の翌年に敗戦を迎え、日本国憲法に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という条文が第25条に盛り込まれることで、今のように社会保障を受けることが権利として保障されているのです。
【わが国の社会保障制度】
日本の社会保障制度は、下の表に書いてあるような制度で成り立っている。財政の支出の中で、社会保障費の支出も大きいが、その中でも社会保険費の割合が多い。ただし、少子高齢化に伴い、年金や介護に関連した社会保障費の割合が増えてくることが予想されている。
社会保険 |
掛け金を積み立てておくことで、高齢になったときや重い障がいを負ったときに現金の給付を受けることができるしくみ。医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険のこと。 |
介護保険 |
2000年からスタート。保険料は40歳以上の全国民が負担。高齢者になって介護が必要なとき、要介護度認定などにより、必要に応じて介護を受けられるようになる。社会保険の一種ととらえる見方もあるが、中学校の公民では社会保険とは別に覚えておきましょう。 |
公的扶助 |
生活が貧しくなった場合、国が税金の中から生活保護費を支給する。どう頑張っても生活できない人たちの生存権を保障するための制度。 |
社会福祉 |
片親の家庭の子育ての支援や、高齢者・障がい者の生活の支援などのための制度をつくったり、支援施設等を作ったりする。 |
公衆衛生 |
伝染病の予防や下水道等の整備、公害の防止などを実施し、生活の場としての街や環境を清潔に保つ |
※少子高齢化になると、社会保障に必要なお金が増えるので、現役世代(定年前の勤労世代)には、社会保障目的の税金か、あるいは社会保険料の徴収額について、今まで以上に大きな負担をしなければならない可能性が高いと考えられている。
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