日本国憲法における基本的人権(5)参政権・請願権
参政権や請願権は、そのほかの基本的人権(自由権、社会権、平等権)が現実のものとして確保されるために、いわば「人権を守るための人権」です。日本国憲法では、国民の人権を厳重に守っていくために、二重に国民の人権を守っていると説明することができます。
【参政権】
選挙権とは、選挙で投票する権利のことで、被選挙権とは、政治家として選挙に出馬する(立候補する)権利のことです。
※一票の格差→政治家一人当たり、何人の有権者を抱えているのかということは地域によって異なる。例えば参院選の選挙区で、地方の人口の少ないところでは、20万票とらなくても選挙に当選する候補者がある一方、都市部の人口の多いところでは40万票を獲得しても落選する候補者もいる。このようなとき、「都市部の人口の多いところの1票は、地方の人口の少ないところの1票よりも影響力が小さい」と考えられ、「1票の格差」問題として、特に平等選挙の原則から外れてしまっているのではないかという観点からしばしば問題になる。
※これまでも「1票の格差」は問題となり、「違憲だが選挙は有効」とする「事情判決」が出された例もある。しかし、2012年の衆院選ではこれまでとは異なり、「違憲」判決が相次いで出されたことで、選挙の正当性に疑問符が付いたこと、そして与野党を超えて選挙制度改革に取り組むべきという認識が共有されたことでも有名である。
【請願権(請求権)】
請求権としては、損害賠償請求権(第17条)、刑事補償請求権(第40条)を定めている。
・国家賠償請求権・・・公務員の瑕疵ある行為により被害を受けた場合、損害賠償を受け取ることができる。
※「国家賠償法」という法律に基づいて賠償を要求することができる。たとえば、公立の学校において、いじめ問題について学校の教諭がいじめを放置したり、いじめに関与していたりして、いじめに対して適切な対応を取らなかった結果、被害者が命を絶ったり、精神的苦痛を受けたりした場合、国家賠償法1条1項の規定に基づいて損害賠償を請求することができます(ただし損害賠償が認められるかどうかは裁判の結果次第となります)。
・刑事補償請求権・・・無実の人が「冤罪」を着せられて裁判にかけられた場合、無罪が確定した時点で、刑事補償を受け取ることができる。
※刑事補償請求権は、「刑事訴訟法」に基づいて請求することになる。国家賠償請求権が「国家賠償法」という法律に基づいて賠償を要求するものであるので、刑事補償請求権と国家賠償請求権の違いとして、どの法律を根拠として行使できるのかという違いをおさえることがたいせつ。
※無実であることが分かり再審で無罪となった事例。
冤罪事件名 |
事件発生 |
無罪確定 |
刑事補償金額 |
免田事件 |
1948年12月 |
1983年7月 |
9071万2800円 |
財田川事件 |
1950年2月 |
1984年3月 |
7496万6400円 |
松山事件 |
1955年10月 |
1984年7月 |
7516万8000円 |
島田事件 |
1954年8月 |
1989年1月 |
1億0780万5400円 |
・なお、無実なのに逮捕されたり、刑務所に入れられたりするということは、不当に刑罰を受けることの問題だけでなく、社会的制裁や偏見にもさらされることの問題もあります。社会的信用を不当に貶められて苦しい思いをした人もいます。また、拘置所に入っている間の時間は戻ってこないだけでなく、年金の保険料を納付していないために、無実が証明されて拘置所などから出たとしても、年金の受給権がなかったりして経済的に苦しむ冤罪被害者もいます(なお、年金の受給については、2013年に特例として救済措置がようやくとられることが決まりました)。
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